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最高裁判所第三小法廷 昭和37年(オ)242号 判決 1962年12月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人津島宗康の上告理由第一点および補充書について。

身元保証に関する法律五条は、民法四一八条、七二二条二項と同趣旨の規定であつて、同条所定の事由あるときは賠償額を実損額より軽減しうる権能を法律が裁判所に付与したものである。もとよりその軽減額は、斟酌すべきものとして認定された事情に照応する合理的なものでなければならないという制限はあるにしても、それらの事情をどの程度に斟酌するかは事実審裁判所の裁量に委ねられていると解すべきであるから、軽減額の量定にあたり、必らずしもその算数的根拠を判示する必要はないというべきである。

原判決が、実損額を半分以下に減軽して身元保証人たる上告人に金四〇万円の賠償を命じたことは、その認定した事実に照し必らずしも不合理とは認められない以上、その量定の算数的根拠を判示していないこと所論のとおりであるけれども、この点に理由不備の違法は存しない。論旨は採用しえない。

同第二点および補充書について。

上告人が原審において「伊藤孝が単なる外交員として雇傭されるものとして上告人は身元保証をした」と主張した事実は記録上認められないこと所論のとおりであるが、これは上告人の自白の撤回が認められた上での上告人の積極否認の一内容として原判決で取扱われているところ、原審は結局上告人の自白の撤回を認めなかつたのであるから、この点についての所論は判決に影響を及ぼす違法の主張とはいえず、排斥を免れない。

また、上告人は伊藤孝の業務が集金人である旨の被上告人の主張を自白し、後これを撤回して否認したことは記録上明白であるから、右自白が真実に反したことの立証責任は上告人が負担すべきところ、右自白が真実に反したことは認められない旨の原判決の事実認定は、その挙示する証拠関係に照して肯認しえなくはなく、その間に条理や経験則に違背した違法があるとは認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用するに足りない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 横田正俊)

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